犬吐く
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犬が吐くときに、 痙攣 をともなったら?どんな病気、どう対処する?

公開日
更新日

 
執筆:碧井 香 (獣医師・獣医学博士)
 
 
犬が嘔吐すると、何か悪い物でも食べたのか、悪い病気が隠れているのではないかと心配になるでしょう。それに痙攣発作まで見られたら、あたふたしてしまうかもしれません。犬が吐いて、なおかつ 痙攣 を伴う場合、どのような病気の可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。
 
 

痙攣 は何故起こる?

 
痙攣とは、筋肉が自分でコントロールできない状態で強い収縮を起こす状態です。原因は、筋肉の収縮をコントロールしている脳自体に異常が生じるもの、筋肉収縮を促す神経伝達物質の異常によるもの、筋肉自体に原因があるものに分けられます。
 
脳の異常によるものは、脳が異常興奮し、その支配下にある筋肉が収縮して痙攣が起きます。異常興奮する脳の位置により、痙攣する位置も変わります。部分的に痙攣することもあれば、全身の筋肉に及ぶこともあり、これをてんかん発作と言います。てんかん発作は、感染症による脳炎や脳腫瘍が原因の場合もあります。
 
神経伝達物質とは神経から筋肉へ刺激を伝えるもので、アセチルコリンと言います。通常、アセチルコリンは自然に分解されますが有機リン系の中毒を起こすと、アセチルコリンの分解が阻害されます。すると、体内のアセチルコリンが異常に多くなり筋肉の収縮が持続し、痙攣が起こります。
 
筋肉自体の異常は低カルシウム血症になった場合です。カルシウムは筋細胞の安定に関与していますが、カルシウムが少なくなると、いつもより小さい刺激で筋細胞が興奮するようになります。このため、痙攣が起こります。
 
 

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吐き気に痙攣をともなう場合、どんな病気が考えられる?

 
 

有機リン中毒(殺虫剤中毒)

殺虫剤には有機リン系のものやカルバメート系のものがあり、アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼの働きを阻害することにより痙攣を引き起こします。誤って飲み込んでしまったり、皮膚に付着しても中毒を起こします。他には、嘔吐、下痢、呼吸困難、チアノーゼなど薬物摂取後数分で症状が現れることが多い中毒です。
有機リン中毒の治療法は、催吐剤や活性炭の投与の他、アセチルコリンの働きを抑える作用のあるアトロピンの投与など、状態に応じて行います。
 
 

熱中症

 
高温で湿度が高い環境下で起こる障害を熱中症と呼び、様々な症状が現れます。呼吸の異常や元気消失、進行すると嘔吐や痙攣を引き起こします。体を冷やして体温を低下させ、各々の症状に合わせて治療を行います。
 
 

腎不全

腎不全で最も多くみられる症状は嘔吐です。進行して尿毒症になると、痙攣や昏睡が起こります。
 
 

低カルシウム血症

低カルシウム血症は血液中のカルシウム量が異常に低くなった状態を言います。嘔吐や痙攣が見られます。バランスの悪い食事を長期間与えることによって起こります。この他に、妊娠中に胎児の骨の形成や出産後のミルクにカルシウムが消費され、母犬が低カルシウム血症になることがあります。
また、上皮小体というホルモンを分泌する臓器の異常によっても低カルシウム血症は起こります。治療法はカルシウム製剤の投与などです。
その他、脳炎や脳腫瘍でも嘔吐に痙攣を伴うことがあります。
 
 

痙攣への対処法

 
痙攣は数秒でおさまる場合もあれば、長時間続くケースもあります。
その際、意識が混濁することもあるので、飼い主さんを認識できず、咬みついてしまうことがあります。犬に触れるときには十分気を付けてください。大きな声で話しかけたり、強い光を与えるといった刺激もさけましょう。また、何か食べた後に痙攣を起こした場合には中毒の可能性があります。早急に動物病院につれていきましょう。
 
痙攣に嘔吐が伴う場合、吐物で窒息しないように、吐物が口の中にある場合には掻きだしてください。吐物を病院へ持っていくと診断の手助けになるため、できれば病院へ持参してください。
 
 

まとめ

 
突然痙攣し吐いてしまったら、中毒か低カルシウム血症の可能性があります。嘔吐や痙攣発作の前に食べたものはないか、食欲が減ったなど低カルシウムをまねく食生活が続いていなかったか、子犬に授乳していないかなどの原因を探ってみましょう。
 
心当たりがない場合は、脳炎や脳腫瘍などの可能性もあります。脳炎を起こす感染症もありますので、病院できちんと調べてもらう必要があります。犬が痙攣すると飼い主さんはパニックになってしまいますが、犬が吐物で窒息しないよう、また痙攣によって怪我をしないように注意てあげてください。できるだけ冷静な対処を心がけて、動物病院へ連れて行ってあげてください。
 
 
<執筆者プロフィール>
碧井 香 (あおい こう)
獣医師・獣医学博士。
現在はフリーライターなど多岐に活動。
麻布大学獣医学部卒業 獣医師免許取得、某アニマルクリニックに勤務しながら、同大学院にて獣医学博士号取得、独立行政法人某研究所勤務、アメリカの研究機関勤務を経て今に至る。
 
 

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